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情報開示,営業秘密の保護強化は,両方が必要 ―― 産業競争力を強化する知財政策(11) 経済産業省知的財産政策室長 小宮義則氏
[2004/04/06] 知財立国の実現に向けて急速な進展を遂げている日本の知財戦略に,2001年夏以降,経済産業省知的財産政策室長として関わってきた小宮義則氏が,その取り組みについて連載する。今回は,知財の戦略指標,情報開示,営業秘密に関する政策趣旨を紹介する,連載の第11回目である。 (村中敏彦=日経BP知財Awareness編集委員)
知財戦略指標を作る 経済産業省では,知財推進計画にある通り,少しマクロ,ミクロ,企業内部マネジメントのそれぞれの観点で,知財力の弱さ,強さを知ることができるための戦略指標を作る作業を,産業構造審議会で進めている。 マクロベースの手法は少し試験的に出しており,日本は欧米と比べ,研究開発費当たりの特許取得件数は多いが,特許1件当たりのもうけは少ない。一方,ミクロベースの指標や,戦略的知財マネジメントの指標作りは難しい。ミクロベースは公開データを使うので,うまくいけば,公開データによって,同一業種内で各社を比較できる指標を作ることができれば,と考えている。研究開発効率も,一つのミクロベースの知財戦略指標になり得る。 知財の情報開示指針が成立 2004年1月には「知的財産に関する情報開示の指針」をまとめた。この指針を策定した問題意識として,知財戦略や知財力をもった日本企業が,かなり過小評価されていると感じることがあった。 他方,知財に関して,日本企業とマーケットとの間で会話が設立できない状態にある。そこで指針を作り,知財報告書をアニュアルレポートの中に織り込んでもらい,マーケットに対して発信してはどうかと考えた。この指針に沿った具体的な成果となる知財報告書は2004年に初めて登場する予定だ。これについては,本連載で後ほど,詳しく触れてみたい。 営業秘密を保護強化する不正競争防止法の改正 無形資産の観点では,社内の営業秘密がどんどん漏れ出ている関係から,営業秘密の保護強化について,2003年の通常国会で不正競争防止法を改正した。米国の経済スパイ法にほぼ近い形で,営業秘密の不正な取得と使用開示に対し,懲役3年,300万円の刑事罰を課すことにし,2004年1月から施行した。 ただし,法律は施行されたものの,日本企業は,営業機密の管理がかなりずさんである。48件の民事の判例中,33件という多数で,秘密管理性が認められていない。秘密管理性とは,アクセス制限と,客観的認識可能性の二つがなければならないが,「マル秘」という判子だけをついて営業秘密をばら撒いている事例が多いようである。 法改正が空振りに終わる懸念も 近ごろ,IT企業で営業秘密がアルバイト,もしくは退職者の形で抜け出て,外国企業に渡っているのではないかという懸念がある。少し関係があるチームの末端で,隣の部の営業秘密を全部のぞき見るようなことをまかり通っている。これでは,いくらアクセスコードをかけたとしても意味がない。一人でも裏切り者が出た瞬間に,ある製品に関連する営業秘密が全部ダウンロードされ,持ち出されている恐れがある。 欧米の企業では,全部を知っているのは研究開発部長とチームのヘッドだけで,あとの人は自分のチームのものしか見られないという管理をしている。いくら情報の共有が大事であるといっても,共有すべき相手はしっかり選ぶ必要がある。このあたりを日本企業がうまく運用できなければ,せっかく不正競争防止法を改正しても,その実効は空振りに終わってしまうかもしれない。(次回へ続く) 図11:営業秘密の保護強化 ![]() 第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回
第6回 | 第7回 | 第8回 | 第9回 | 第10回 第11回 | 第12回 | 第13回 | 第14回 | 第15回 第16回 | 第17回 | 第18回 | 第19回 なお,本記事の寄稿者である経済産業省・小宮室長は,4月21日開催の第1回 知的財産研究所・テクノアソシエーツ タイアップシンポジウム「侵害リスク増大する中国知財問題」にて講演を予定している。 |
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