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「私的録音録画補償金制度は“縮小・廃止”で検討する」
経済産業省・政策企画官の藤原 豊氏に聞く(下)
[2005/04/27]

経済産業省・政策企画官 藤原 豊氏 著作権法では原則的に,著者物を個人的または家庭内など限られた範囲内で使うことを目的にした複製(「私的複製」)を合法としている。ただし,CD,DVDに代表されるデジタル・コンテンツについてはコピーを繰り返しても品質が劣化しないことなどを理由に,私的複製でも消費者は「相当額の補償金を著作権者に支払うこと」になっている。この「私的録音録画補償金制度」に則って,消費者は実は,デジタル録音・録画機器や記録媒体を購入する際に,補償金が「上乗せされた」価格を支払っているのだが,そのこと自体がまったく知られていないケースが多い。この制度については,2006年に予定される著作権法の改正に向けて,現在,政府が見直しを図っている。担当者の1人,経済産業省・商務情報局の政策企画官である藤原 豊氏に,同制度の概要と現状における問題点を聞いた。
(まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集)

著作権法上の「技術的保護手段」,「私的複製」の関係を整理すべき
 著作権法は,1999年の改正を通じて「技術的保護手段」(複製防止技術)という考え方を導入した。技術的保護手段の代表例としては,「1度しかコピーできないように制御されたデジタル放送方式」や,「パソコン(PC)でのコピーなどができないように制御したコピー・コントロール・CD(CCCD)」などがある。
 技術的保護手段の導入によって,「権利者側が著作物に複製防止技術を講じていれば,私的なコピーであっても,これを改ざん・除去した場合は著作権侵害に該当する」ことになった。言い換えれば,「技術的保護手段が講じられている否か」,「その程度がどれだけであるか」によって,デジタル・コンテンツに関しても「私的複製の範囲」が決められることになったのである。
 現行の私的録画録音補償金制度は,「デジタル・コンテンツに対する技術的保護手段という考え方がない時点での私的複製」を前提にして,創設された仕組みである。しかし,同制度は現在まで見直されていない。さらに,著作権法上においても「私的複製」と「技術保護手段」の関係についての直接的な規定が一切なく,関連する判例も現時点ではない。
 こうした状況から,技術的保護手段の考え方が導入された際に,私的録画録音補償金制度の存在意義を大いに検証する必要があった,といえる。

著作権者側の補償金配分方法にも疑問
 私的録音録画補償金制度は,補償金の配分面も含めてそれ自体が「制度疲労」を起こしている部分もある,と認識している。
 例えば,第1回で述べたように,徴収された補償金の全体の20%が,「指定管理団体」によって「共通目的事業」として差し引がれることになっている。共通目的事業の内容は「著作権などの保護・振興のための普及啓蒙事業など」とされているが,それならば,補償金に基づく仕組みでなくとも,一般の予算措置などへ振り替えることも可能だと思う。
 加えて,ここ数年の規制緩和によって著作権管理事業に新規に参入した者に対する補償金の配分が,既存の管理事業者を経由している事例もあると聞いている。

「ハードディスク内蔵型の録音機器」も議論の遡上に
 私的録音録画補償金制度について,現在,文化庁の文化審議会・著作権分科会・法制問題小委員会(主査:東京大学教授・中山信弘氏)が,「基本問題」として検討を進めている。
 2005年1月に決定された「今後の検討課題」では,(a)ハード・ディスク・ドライブ(HDD)内蔵型の録音機器,(b)パソコン(PC)の内蔵・外付けのHDD,データ格納用CD-R/RW,のいわゆる汎用機器・記録媒体を,私的録音録画補償金制度との関係で今後どのように取り扱うか,などが具体的な事項として挙がっている。こうした対象機器の議論だけでなく,先に指摘したようなこの制度に含まれる本質的な問題点を含めた幅広い議論を期待したい。
 2005年中に著作権分科会・法制問題小委員会は報告書を取りまとめる予定である。これに向けて,2005年4月28日に開催される同委員会では,著作権関係団体・メーカー団体を含めた本格的な審議が開始される。

私的録音録画補償金制度の縮小・廃止に向けた検討へ
 経済産業省としては,2005年4月中に公表する予定の「情報経済・産業ビジョン」の中でも述べているように,私的録音録画補償金制度について「技術的保護手段」の進展などを踏まえ,可能な部分からすみやかに見直す予定だ。例えば,補償金制度に替わる予算制度の活用なども視野に入れつつ,制度の縮小・廃止などに向けた検討を開始すべきだと認識している。
 「著作権の管理・保護」は重要な課題だ。その反面,情報家電が普及するデジタル社会においては,コンテンツの円滑な流通を確保するとともに,「デジタル社会の恩恵を最も大きく受けるべき消費者・利用者の利便性」を尊重しなくてはならない。現行の「私的録音録画補償金制度」も含めて,著作権法の制度全体が,双方の適正なバランスに基づく仕組みに1歩でも近付くように,関係者による不断の努力が今後とも必要である。(前回の記事

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