日経BP知財Awareness

日経BP知財Awareness トップページへ 企業経営関連記事へ CIPO関連記事へ 政策・法制関連記事へ 訴訟関連記事へ 職務発明関連記事へ

人材育成関連記事へ 産学連携関連記事へ 提言関連記事へ 技術&事業シーズ ニュースリリース イベント・セミナー情報



理工系出身者の新たな活躍の場となる産学連携・知的財産マネジメント
要求される能力が日米の調査で明らかに
[2007/08/28]

政策研究大学院大学准教授の隅蔵康一氏
政策研究大学院大学 准教授
隅蔵康一氏
 昨今の日本では,イノベーションによる産業発展,中でも知的財産の産業化の重要性が叫ばれている。そして,この知財産業化を担う人材として知的財産マネジメント人材の育成は急務となっている。例えば,内閣府知的創造サイクル専門調査会が2006年に発表した「知的財産人材育成総合戦略」においても,知財人材を三つに大別,その1つとして「知的財産創造・マネジメント人材」を掲げられるなど,知財マネジメント人材に対する必要性が急速に高まってきた。しかし,この知財マネジメント人材,その中でも大学が持つ知財を産業に結び付ける産学連携に携わる人材に必要な経験や知識・能力に関しては十分に調べられているとは言いがたいのが現状である注1)。このような中,政策研究大学院大学准教授の隅蔵康一氏は,知財マネジメントや産学連携で日本の先を行く米国のシステムや人材育成手法を研究して求められる知財マネジメント人材の経験や知識・能力などを調査・分析している。さらに同氏は,大学と企業の知財人材の交流や相互学習を図るため,2000年から「知的財産マネジメント研究会」(略称:Smips)を主催している。隅蔵氏に知財マネジメント・産学連携人材に求められる経験や知識・能力,さらにはSmipsの実績などについて聞いた。
(聞き手は品田 茂=日経BP知財Awareness編集)

知財マネジメント・産学連携人材に求められる経験や知識・能力とは,どのようなものか。
 ひと言でいうと,「コミュニケーション能力に高く,ビジネスに精通した研究者」だ。われわれは,知財マネジメント・産学連携人材に求められる経験や知識・能力を明らかにするために,2007年3月に米国で開催された大学技術管理者協会(association of university technology managers:略称AUTM)の参加者に対し,(1)産学連携業務を遂行する上で重要と考える知識・能力は何か,(2)その人自身の学術分野や職上の経験は何か,(3)知財マネジメント・産学連携の経験年数,などを調査した(図1)。

【図1】


 まず(1)に関しては,1位が「コミュニケーション能力」,2位が「科学技術知識」,3位が「ビジネス能力・経営能力」となった。このような結果は,日本においてもほぼ同様である。すなわち,われわれが「知的財産マネジメント研究会」(略称Smips)参加者を対象にした2005年に実施した同様の調査でも,1位は「ビジネス能力・経営能力」,僅差で2位は「コミュニケーション能力(語学を含む)」,3位は「科学技術知識」となった。これらの結果から,日本と米国において,いずれも知的マネジメント・産学連携人材には,「コミュニケーション能力」,「ビジネス能力・経営能力」,「科学技術知識」の三つが必要と言える。
 次に(2)の調査については,1位が「技術移転」,2位が大学での「学術研究」,3位が「企業の研究開発」と「企業の知財マネジメント」となった(3位は同数)。また(3)の調査結果を分析したところ,産学連携人材の経験年数と属性の関係に新しい傾向が見えてきた。知財マネジメント・産学連携の経験年数が長いベテラン人材の分類では,企業で研究開発プロジェクトのマネジメント経験者が多いのに対し,経験年数が少ない人材の分類では,大学での学術研究経験者が多い。産学連携人材に関し,従来は企業出身者が主だったが,最近は大学の研究者中心に移行していることを示していると思われる。今後もこの傾向が進むだろう。
今後この調査結果をどのように活かしていくのか。
 今回の調査により,知財マネジメント・産学連携人材のキャリア・パスや各業務で重視される能力などの概要が見えてきた。今後は,さらに詳細に分析していくとともに,これまでに分かったことを基にした人材育成プログラムなどを開発していく。このようなことを具現化するための一つの仕組みとして,われわれは「知的財産マネジメント研究会」(略称:Smips)を主催している。
Smipsの目的や概要を教えて欲しい。
隅蔵氏 Smipsは,東大TLO(technology licensing organization)社長の山本貴史氏などの賛同を得て2000年に設立した。理工系大学院修了者のキャリア・パスの1つとして知財マネジメントや産学連携といった職種があると示し,参加者同士で研鑽(けんさん)しながら知財マネジメント能力を身に付けることを目的としている。2000年当時,他には理工系学生を対象とした知財マネジメントに関する研究会などは開催されておらず,Smipsはその先駆けとなった。
 設立当初から1回/月の研究会方式で活動しているが,現在は参加者の目的に応じて8つの分科会を設けるところまで拡大している。参加者も,当初は理工系学生やポスト・ドクター(未就業の博士号取得者),企業の研究者などが中心で,知財業務に携わる参加者は少なかったが,現在は理工系学生に加えて大学や企業の知的財産に携わる様々な人材や弁理士などの専門家が集まるようになった。現在メーリングリストに約1000人が登録し,情報の配信を受けている。参加者の意識も高まり,知財マネジメントを志す学生が増えてきたと実感している。
分科会にはどのようなものが存在するのか。また分科会から生まれた実績はあるか。
 (1)アグリビジネス分科会,(2)産学連携分科会,(3)知財キャリア分科会,(4)知識流動システム(KMS)分科会,(5)特許戦略工学分科会,(6)ベンチャービジネス分科会,(7)ライセンス・アソシエイト分科会,(8)Law and Practice(LAP)分科会,の8つがあり,各個に活動するとともに活発に交流している。このうち(4)のKMS分科会は小学生を対象とし,知財の基礎知識を伝えることを目的とした絵本「かずくんはつめい・はっけんシリーズ」の製作などの活動を進めている。また(5)の特許戦略工学分科会は,特許明細書の請求項を明瞭かつ理解しやすい形で記述するための請求項記述言語を開発しており,知財学会などで成果を発表している。中でも(7)ライセンス・アソシエイト分科会では,参加者が大学のTLO部門や企業の知財部門に就職するという実績を上げている。Smipsの目的である“キャリア・パスの提示”が結実したといえるだろう。

注1)
例えば「イノベーション」という言葉は「技術革新」と訳されるが,元々の「イノベーション」には既存の複数の知財(技術)を組み合わせたり知財(技術)の周辺環境(ビジネス・モデルや適用領域)を変えたりして産業に結び付ける知財マネジメントの役割を指す意味が含まれている。しかし訳語の「技術革新」では,知財(技術)創造だけに焦点が当たっており,知財マネジメントが意識されにくい。また「技術立国日本」という場合の「技術立国」にも同じ傾向がある。このように,これまでの日本では知財(技術)創造のところが重視される一方,知財活用のところが軽視されてきた。




ヘルスケア産業はこうすれば立ち上がる

サイト内検索

広告欄

CIPO
CIPO
【特別座談会】 特別座談会
環境技術移転に有効な「WIPO-Green」が始動
〜このままでは日本企業は勝ち残れない

知財ナビ
知財パーソン 知財パーソンの履歴書
知的財産管理技能士から,
知財人材の様々な人物像に迫る

米国知財レター

前川有希子の米国特許Insight

永澤亜希子のパリ発・フランス知財戦略

ブライナ代表 佐原雅史の知財キャリア応援コラム
<過去の連載>
シリーズ:新規事業開拓と知的財産

藤森涼恵の知財show me the money

日高賢治の中国知財最前線

柴田英寿のアントレプレナーシップ論 オープンスクール



日経BP社 TechnoAssociates, Inc.