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劇的に変化する特許侵害訴訟の現状(下)[2004/07/08]
阿部・井窪・片山法律事務所のパートナー弁護士である北原潤一氏は,5月17日に開催された「知的財産 法務・会計・税務セミナー」(主催:監査法人トーマツ・知的財産グループ,阿部・井窪・片山法律事務所)において,最新の知財訴訟の動向と審理モデルについて講演した。北原氏は,近年に出された重要判決のポイントを示して,「この5年間で特許侵害訴訟が劇的に変化した」と指摘した。 (まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集)
侵害訴訟の最大のポイントは「無効論」 特許侵害訴訟をめぐる最近の動向として最も大きなポイントは,無効論である。無効論は,富士通と米Texas Instruments Inc.が争い,2000年4月11日に最高裁が判決を下した,いわゆる「キルビー特許事件」が大きく影響している。 この判決の中で,最高裁は「特許に無効理由が存在することが明らかであるときは,その特許権に基づく差止め,損害賠償等の請求は,特段の事情がない限り,権利の濫用に当たり許されない」との判断を下した。富士通側による無効の抗弁を実質的に認めたものである。 キルビー特許事件の以降,2004年4月中旬までの期間で特許の無効をめぐる判決の状況は次のようになっている。「明白無効」が争点となったケースは,すべての特許侵害訴訟判決の約27%,そのうち明白無効とされたケースは約70%である。「明白無効」とされたケースの理由の内訳は,(ア)進歩的欠如が約66%,(イ)新規性欠如が約36%,(ウ)その他が4%,である。 東京・大阪両地裁で判決傾向に差異 キルビー特許事件以後,東京地裁と大阪地裁において争われた無効論の状況を統計的に分析した。その結果を図2に示す。 図2:無効論 キルビー特許事件以降の無効論の状況(東京vs.大阪) ![]() 数字からは,東京地裁の方が無効論に積極的なように見える。そして,無効理由の内訳において両地裁で違いが見られることは興味深い事実である。 損害賠償に関する規定の整備 以上,特許侵害訴訟について侵害論ステージを中心に検討してきた。これに加えて,損害論ステージにおいて,ここ数年で損害賠償に関連する規定が整備されたことを指摘したい。 1998年の特許法の改正では,損害賠償の高額化を狙った法整備が実施された。具体的には,特許法102条1項(逸失利益の推定)の新設である。この条項は,権利者が自己の利益率を開示できるケースで利用し,損害賠償の高額化に「貢献」している。判例としては,2002年3月19日に東京地裁判決で損害賠償額が74億円と認定された「パチスロ事件」,2002年10月31日に東京高裁判決で損害賠償額が15億円と認定された「トラニラスト事件」がある。 さらに,権利者が自己の利益率を開示できない場合に用いる102条2項(侵害者利益),権利者が不実施のケースで利用する102条3項(実施料相当額)の活用が増加している。 損害論ステージにおいては,もはやクレームの解釈は争点にならない。この段階では,侵害が生じたという前提で審理が進むからである。 訴訟で強いのは「非権利者」か? 最後に,図3に特許侵害訴訟判決の傾向を示す。この数字だけを見ると,「プロパテントの時代」と言われながらも,まだまだ権利者の保護には程遠い印象を受けるかもしれない。しかし,これは訴訟で判決に至ったケースの結果であり,実際には,判決に至らず和解などで決着するケースが多々ある。その中には権利者にとっては「勝ち和解」といえる場合が多く,その点を考慮すれば,図3に示した数字の読み方は当然変わってくる。 図3:最近(H10.1〜H16.4)の特許侵害訴訟判決の傾向(まとめ) ![]() |
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