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味の素の「職務発明訴訟」への対応(2)時効に関する1審判断は過去の判例と違う [2004/07/13]
味の素・知的財産センター長の杉崎宏光氏は,このほど開催された「企業経営と知財マネジメントの実際」と題するセミナー(主催:インテクストラ)で,「職務発明訴訟への対応と企業」について講演した。同社の職務発明訴訟での消滅時効に関する1審判断が,過去の判例と食い違っており,対象特許の時効は成立している判断すべきと,杉崎氏は説明した。 (まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集) 特許出願から提訴までの経緯 ここから訴訟での主な争点について,(1)時効,(2)外国特許,(3)発明者の受けるべき利益の額,(4)発明者と企業の貢献度,(5)発明者に対する企業の処遇,の5点から考察する。 本件の静置晶析特許について,味の素は1982年に日本で特許を出願した。その後,同社は1990年に「発明等取扱規程」を制定し,出願時と登録(公告)時における補償を定めた。そして1992年,本件の静置晶析特許を登録した。1982年の出願当時は,発明の取り扱い規定はなかったのである。味の素は1999年に制定した「特別報奨規程」に基づいて2001年に原告の発明者に1,000万円の報奨金を支払った。この後,2002年9月になって,発明者は提訴に至った。 第1の争点は「消滅時効」 こうした経緯について,消滅時効の成否が第1の争点となっている。味の素の主張に基づき,1審は次のように認定した。「本件各発明に係る特許を受ける権利を,発明者から味の素に承継させた1982年1月の時点では,勤務規則などに対価支払い時期に関する条項がなかった。そのため,時効起算点は,発明譲渡=出願時と考える。従って,10年が経過した1992年に時効が完成している」。つまり,ここで裁判所は,静置晶析特許の発明譲渡に対する対価請求権が時効で消滅していたことを認めている。 ところが,1審は味の素の認識と異なり,特許報奨金の性格付けに関して,次のように判断した。「特許報奨金は社内の特許報奨規程によれば,実質的には実績報奨金にあたり,『相当の対価』の一部である。従って,味の素から発明者に対する報奨金の支払いは,相当の対価の支払債務について時効が完成した後に,その債務を承認したものと考えられる。そのため,味の素がその債務について消滅時効を援用することは,信義則に照らし,許されない」。 「1審の時効に関する判断は判例と相違」 しかし,この1審の判断は,最高裁を含む過去の判例と食い違っている。過去の判例では,信義則違反は,「援用権者の行為により債務者(本件では味の素)が時効を援用しないであろうという信頼関係が生じたかどうか,債務者の援用によって,この債務者の信頼が裏切られるかどうかにある」とされている。 本件の場合は,原告の発明者は当初から特許法35条の存在を認識した上で,それとは別の単なる報奨と考えて1,000万円を受け取った。そのため,「報奨金の支払いが特許法35条の時効援用をしないとの信頼を与えた」とは言えない。つまり,味の素が,発明者に対する相当の対価の支払い債務に関して,消滅時効を主張しても,信義則に照らし,許される。 |
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