![]() |
![]() |
味の素・アスパルテーム職務発明訴訟の真実(下) 裁判官による強い要請が和解の最大理由 [2005/02/28]
味の素の甘味料「アスパルテーム」の製法特許をめぐって,元社員の成瀬昌芳氏が職務発明に関する対価の支払いを求めていた訴訟は,2004年11月19日に和解が成立した。和解内容は,味の素が成瀬氏に対して1億5,000万円の和解金を支払うことで決着した。「第1に,裁判所による強い和解勧告があったから和解に応じた。さらに,さまざまな要素を経営として総合判断した結果だ」。同社・知的財産センター長の杉崎宏光氏は和解に至った背景をこのように説明する。訴訟では何が争われ,そして何が課題として残されたのか。杉崎氏にアスパルテーム職務発明訴訟の真相を聞いた。(聞き手は久保田茂夫=日経BP知財Awareness編集委員, まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集) 和解を決断する際にどのような経営判断が下されたのか。 実は和解案について,味の素は当初受け入れを拒否していた。控訴審において論点として挙げた要素に関する主張には自信があり,さらに1億5,000万円という額は決して納得できる金額ではなかったからである。 しかし,(1)裁判所の和解勧告が相当強固であったこと,(2)成瀬氏側が最初に和解に応じたこと,(3)支払うのが「対価」ではなくあくまで「紛争解決金」だったこと,(4)絶対額は1審の判決額を大幅に下回る金額であり,訴訟当初に成瀬氏が要求した「20億円」と比較すると事実上は勝訴に近い内容であること,これらを勘案して最終的に和解に応じることにした。 「係争を継続する」という選択肢をとらなかった理由は何か。 最大の理由は,裁判官からの強い和解による事件決着の要請である。加えて,和解に際しては主として次の要素を考慮した。 第1は,和解勧告を拒絶することで裁判所の心証を害する恐れがあったことである。加えて,これまでの職務発明訴訟の控訴審は1審判決よりも高額,あるいは同額の対価額が認定されており,1審の額を下回るケースがなかった。 第2は,訴訟の長期化に伴うコスト増大である。訴訟費用に加えて,数年後に訴訟で対価が決定した場合,その対価に関しては「支払いが遅滞した」として年5%の金利が自動的に加算される。1審判決の「1億9,935万円」を基準に考えると,金利だけに年間約1,000万円を支払わなくてはならないことになる。 第3は,いつまでも訴訟を継続して,後ろ向きの力を注ぐよりは,その分早く解決して前向きなビジネス展開に注力すべきであるとの判断があったことによる。 第4は,和解金の支払いは,紛争解決のための政策的・裁量的な金員の支払いであり,「相当対価」ではないので,同種の他社紛争への基準にはならないし,影響しないと考えたことによる。 会社貢献度が高く評価された点で,職務発明訴訟全般に味の素の1審判決が及ぼした影響は大きかった。このことについてどう見るか。1審判決は,確定しておらず,基準にはならない。1審で示された95%の会社貢献度も,当社の主張に基づくと低い数字であり不満があった。ただし,「あらゆる部門の従業員の働きが企業の利益を生み出す」という「利益の創造チェイン」の考え方が裁判所に少しでも理解してもらえた点は意義があったと思う。これは,どの企業,どの事業にも当てはまることであり,訴訟に限らず,企業内で職務発明を検討する際に重要な認識だ。特許法35条を盾にして発明者だけが突出した対価を要求することは,不公平な行為と言わざるをえない。 2005年4月に特許法の改正が施行される。職務発明に関して,まだ最終的に裁判所が関与して対価を決定する余地があり,企業が同様の訴訟に直面する可能性は残っている。ただ,一連の訴訟を見れば分かるように,職務発明の対価の決定は,裁判所で行うことが適しているとはいえない。当事者間における話し合いや規程に基づく対価決定が現実的であり,優先されるべきであろう。 味の素における新しい職務発明規程について教えて欲しい。 現在,職務発明に関する新しい制度の策定作業を進めており,2005年中に施行する予定だ。発明創造の風土をより醸成でき,特許取得が研究者の意欲増進につながるように,従来よりも早い時期から補償金を出すこと,さらに,技術立社を促進する基盤拡充のためのフェロー制度の導入などを同時に検討している。(前回の記事) |
<過去の連載>
![]()
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
企業戦略 | CIPO | 政策・法制 | 職務発明 | 訴訟 | 人材育成 | 産学連携 | 提言 | ニュースリリース | イベント・セミナー
| このサイトについて | 著作権・リンクについて | 情報提供 | 広告掲載について |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||