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整備進む法制度を活用し知的財産経営を推進
富士通 経営執行役の加藤幹之氏に聞く
[2004/07/26]

 富士通の経営執行役 法務・知的財産権本部長である加藤幹之氏に,同社の知的財産戦略と,知的財産に対する基本認識について尋ねた。特に,韓国Samsung SDI Co., Ltd.との特許紛争,すなわち,PDPの基本技術に特許侵害があったとして,同社を日米で提訴し,東京税関で輸入差し止めを申し立てた案件について,その考え方と経緯を聞いた。
(まとめは村中敏彦=日経BP知財Awareness編集)
富士通 経営執行役 法務・知的財産権本部長 加藤幹之氏
富士通 経営執行役
法務・知的財産権本部長 加藤幹之氏

韓国Samsung SDIとの特許紛争は円満に和解
 韓国Samsung SDI Co., Ltd.との特許紛争は,2004年4月に大々的に報道されたが,2ヵ月で円満に和解できた。今回は裁判ということで注目を集めてしまったが,当事者しか知り得ない水面下での特許ライセンス交渉や,ノウハウを含めた知的財産の交渉や紛争は,報道された件数よりはるかに多いはずだ。裁判は時間,労力,お金がかかるし,リスクもあるので,できるだけ避けたいと考えている。
 今回の件について和解内容そのものは両社の守秘義務により,具体的に公表することはできないが,3点指摘しておきたい。
 第1に,韓国Samsung SDIは「富士通の特許は無効である」との主張で提訴したが,「富士通は韓国Samsung SDIの特許を侵害している」との主張で提訴はしなかったこと。第2に,富士通が提訴の対象とした特許は基本特許であること。第3に,エレクトロニクス分野で同じ事業を手がける企業同士は,特許のクロス・ライセンス契約を締結するのが通常であること,である。和解により,Samsung SDIの製品の輸入は再開されたが,それでも構わないと判断した。

日本が知的財産で対立するのは米国からアジアへ
 今回の紛争に限らず,日本企業がアジア企業を訴える特許裁判は,今後も増えていくだろう。長いスパンで見ると,「もの作り」と知的財産分野の対立の構図は,かつての日米対立から,日本とアジアとの対立に構図が変わってきた。アジアに生産拠点が移転し,合法的か,怪しげな手法かは別にして,アジア企業に技術が流出し,アジア企業が技術力を付けたことが背景にある。
 PDPの特許を件数ベースで単純に比較すると,韓国が急速に技術力で追い付いて来たように見えるかもしれない。もっとも,富士通は基本特許を押さえ,改良特許も出願し,さらに独創的な発明に向けた研究開発にも着手している。日韓の技術力を件数で比較するのは短絡的だと考える。
 このような対立の構図だけではなく,ソフトの価値についても長いスパンで見ることができる。つまり,人間社会が認める価値は,ハードウェアから情報や知識,知的財産といった,ハッキリとは目に見えないものにシフトして来ている。知的財産立国という日本の政策や法制度の急速な整備は,こうした大きな流れに沿ったものと位置付けられる。今や,知的財産分野の法制度は,米国に引けを取らない水準に到達したと思う。

法改正を活用して輸入差し止めに成功
 Samsung SDIの製品の輸入差し止めも,2003年の改正関税定率法を活用したものである。加えて,2004年1月の改正不正競争防止法の施行により,技術ノウハウをはじめとした営業秘密の漏洩に対して抑止力が働くことも,経営上のインパクトは大きい。
 このように整備が進む知的財産の法制度を活用して,知的財産経営を推進していくことが重要と考える。ここで,知的財産経営とは,知的財産戦略が独立した戦略としてポツンと存在するのではなく,知的財産戦略,研究開発戦略,事業戦略を三位一体で実行するものだということを強調したい。(談)
 詳細については,日経マイクロデバイス2004年8月号の特別企画記事「勝ち組は“知財”で攻める」を参照。

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