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シリーズ
職務発明訴訟における構造的な問題(2) ― 「青色発光ダイオード訴訟」を例として

特許は高い確率で事後的に無効になる
[2004/06/16]
知的財産制度研究会
弁護士 松山 遙氏(日比谷パーク法律事務所)
弁護士 西本 強氏(日比谷パーク法律事務所)

 この5月に,職務発明訴訟制度に関連した特許法の改正が成立した。しかし,同制度は依然として多くの構造的な問題を抱えている。この中で,本連載は,「対象特許の有効性が議論されていない」という点に注目し,現在の職務発明訴訟では「訴訟対象の特許が無効もしくは極めて限定的な価値しか持たない可能性があるにも関わらず,この点に関する議論が十分になされないまま,裁判所が巨額の相当対価を算定して支払いを命じている」現状について検討する。
 本連載では,中村修二氏と日亜化学工業の間の訴訟において争点である「2フロー制御特許」をケース・スタディの形で検討する。連載(2)の今回は,(B)一般的な特許の現状として,無効になる可能性が高いことを示す。

特許が事後的に無効になる確率の高さ
 今回は,一般的な特許の現状として,無効になる可能性が高いことを示す。
 一般の方には意外かもしれないが,特許はいったん成立しても,かなりの確率で事後的に無効になる。ある米国人の特許弁護士は,「米国では,特許はまず裁判で“テスト”されるべきだと考えられている。仮に成立したとしてもその後に裁判などを経ないと,どの程度の有効性があるのかわからない」と述べている。事情は日本でも同じである。
 特許は,出願時点に新規かつ進歩性がなければならない。制度上は,特許庁が審査し,出願時点を基準として新規性・進歩性の要件を満たした場合のみ,特許が付与されることになっている。しかし,特許庁が審査段階ですべての先行文献を調査することは不可能であり,見落としは避けられない。
日比谷パーク法律事務所パートナー/松山 遥氏
松山 遥氏

日比谷パーク法律事務所アソシエイト/西本 強氏
西本 強氏

 例えば,学会で発表された論文や,企業が顧客に配布していた技術資料などを,特許庁が自ら見付け出すことは困難である。膨大な数の出願を限られた人数と時間の中で処理しなければならないため,現実的には特許公報類以外の文献まで逐一検索しているゆとりはない。
 一方,特許ライセンスの支払い請求を受けた企業は,特に競合企業からこのような申し入れを受けた場合,必死で特許を「つぶす」ために先行文献を調査する。多数の特許出願を処理しなければならない特許庁の審査と異なり,対象の特許は件数が限定されているし,ある程度の規模の企業であれば,世界中の文献を調査するだけの社内資源もある。こうした調査の結果,特許庁が審査段階で見落としていた重要な文献が見つかり,特許が事後的に無効になる場合がある。
 いったん成立した特許を無効にする手続きを「無効審判」という。無効審判の結果,平均で約30%の特許が無効と判断されている。2001〜2002年には,審判で取り上げられた特許のうち,実に50〜60%が無効と判断された(図1)。

図1:無効審判成立の割合
「特許行政年次報告書2003年版」より著者が作成。ただし,各年の無効となる割合は,その年の無効審判の請求件数を,その年の無効とされた件数で除した数値である。
図1:無効審判成立の割合

 この数字から,「特許は行使してみないと有効かどうかわからない」ということを,実感としておわかりいただけるのではないだろうか。

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