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製品ネーミングから模倣品対策まで幅広い商標業務に対応 花王・商標部マネジャーの遠藤 明氏が講演(下) [2005/11/14]
「事業展開の多様化に伴い,最近のブランド戦略,中でも商標業務は幅広くなっている」。花王のブランド戦略について,同社・商標部・マネジャーの遠藤 明氏はこのように指摘する。家庭用製品を中心とする花王において,消費者に直結する製品名など商標が果たす役割は非常に大きく,2005年時点で国内外約10,000件の商標を取得している。これらの管理を含む商標業務は,多様化・戦略化が急速に進んでいるという。本記事は,東京都知的財産センターが2005年10月25日に開催したシンポジウムにおける,同氏の講演の要約である。 (まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集) 製品のネーミング活動支援が商標業務の核 商標に関する業務は一般的に,(1)製品のネーミング(命名)活動の支援,(2)商標登録の可能性の判断,(3)商標権の出願と登録,(4)商標権の維持・管理,(5)模倣品の排除,に区分できる。 当社は(1)の製品のネーミング活動を重視しており,特に,スケジュール管理に細心の注意を払っている。1年間に2回,各事業部が事業計画を提示し,その際にネーミングが必要な新製品の発売予定などを確認する。製品発売の時期から作業工程を逆算し,商標出願に関するスケジュールを立てる。近年は社内のイントラネットを活用し,共通フォーマットに基づき工程を管理している。「ラフ調査」などいくつかの工程に区分し,予定日と進捗状況を随時記録して関係部署間で情報共有を図っている。 第1段階では,マーケティングや製品開発部門と連携して製品名候補をスクリーニングする。候補となる名称の約80%をこの段階で選定から外す。第2段階では,商標部が候補名称を調査する。日本国内での登録については,特許庁電子図書館(IPDL)のデータベースを使った精査が中心である。ただし,出願からIPDL上で検索できるようになるまでには数カ月間の時間差が生じるため,製品化直前の工程で必ず再調査を実施する。製品名候補について他社が商標権を有している場合は,ライセンスや譲渡などを求めて交渉を実施することがある。 第3段階は,製品名候補の商標出願である。この段階で複数の候補がある場合は,すべて出願し,その後に製品名を最終決定する。 多様化・高度化する花王のブランド戦略 事業展開の多様化に伴い,最近の商標業務は幅広いものになっている。 商標に関する調査は,製品名に直接的に関する要素だけでなく,幅広い要素を対象とする。例えば,サブ・ネーム,セールス・キャンペーン時期のキャッチ・フレーズ,製品の成分名などが該当する。これらの表示は不正競争防止法などの観点からも慎重に検討を加える。世界規模で事業を展開する主力級の製品の場合,ブランドの統一化を図るために,商標権を複数の国で取得する。このような場合,調査対象は1,000件以上に及ぶ。 当社は近年,新しい市場分野へ積極的に進出している。その際,従来の事業との差異化を図るため,あえてブランドとしての「花王」や「月マーク」を強調しない製品がある。また,製品の中には販売開始の3〜4年前から商標の取得を準備する場合がある。例えば,「ヘルシア緑茶」はまったく新しいタイプの製品であったため,模倣品対策として,商標の区分上は「お茶」や「清涼飲料水」だけでなく食品全体に登録した。2005年時点で当社は,日本国内で約5,000件の商標を取得している。その中には,過去に使った商標を再度利用して,現在ヒット製品になった名称もある。例えば,食用油の「エコナ」,化粧品の「SOFINA(ソフィーナ)」,家庭用洗剤の「アタック」などである。使用されなくなったとはいえ,過去にスクリーニングの上で選ばれた良い商標が多い。商標部では,こうした,いわばリサイクル的な使用も推奨している。 模倣品対策を積極的に展開し, 直接的な商標の管理業務に加え,商標部は,事業部門を始めとして全社に対して商標の重要性を喚起している。例えば,表示の方法や商標のデザイン化などで誤った利用によっては商標権を失う恐れがある。さらに,自社の商標と同様に他社の商標を尊重する姿勢が必要である。 商標を尊重する上で,模倣品対策は不可欠である。模倣品の多くは東アジア地域で製造されており,欧州や中近東地区の市場にも不正に流出している。こうした状況は,当社の直接利益に関わるだけでなく,顧客に対する企業の責任上,放置できない。悪質な模倣品に対しては刑事告発を行うなど,日本国内・海外において厳格な姿勢で臨んでいる。 (前回の記事)
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