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シリーズ ― 先進企業の知財戦略と求められる人材像(1) 全社を挙げた知財戦略で競争時代を勝ち抜く(中)― 大成建設・知的財産部 [2004/08/24]
「知財は法律上の課題ではなく技術戦略上の課題である」。大成建設・知的財産部長の大野茂氏はこのように断言する。大成建設は「技術なくして経営なし」という企業姿勢のもと,全社を挙げて知財戦略を進めるべく2003年10月に知財戦略を発表した。知財戦略をいかに進め,激化する競争の中で勝ち抜くか。大成建設が進める取り組みを大野氏に聞いた。(聞き手は河井貴之=日経BP知財Awareness編集)
「知財は技術戦略上の課題」 ― 企業姿勢を体現する知的財産部 知財戦略の推進において,知的財産部が舵取り役を担っている。当社は1999年に技術センター内(当時は技術本部)に知的財産部を設置した。 企業における知的財産部の位置付けは,知財と取り組む姿勢と相関している。当社の場合,技術センター内に設置したのは,「技術なくして経営なし」,「知財は技術戦略上の課題である」という企業姿勢に基づいている。 知的財産部には現在,20名弱が所属しており,特許室と知財管理室の2室がある。業務は大別して,特許室が対応する(1)技術の権利化,(2)侵害・被侵害対応と,知財管理室が対応する(3)技術契約,である。(1)と(2)は技術系の社員が,(3)は事務系社員が主に担当する。 技術のスペシャリストである研究開発担当者と,権利化,法律の専門家たる弁理士の間でそれぞれの専門性を「翻訳」し,当社の知財戦略に沿った形で権利化の方向付けをした上で,権利範囲をより広く強くするのが知財部の役目と考えている。 例えば,技術者が新しい工法Aを発明したとする。このような場合,技術者はその方法Aを技術的に深めることに集中し,弁理士は工法Aの権利化を進めことに集中する。知的財産部員は,戦略的な観点から工法Aをより強い知財にするために,周辺特許に成り得る工法A’やA”が存在しないか,あるいは他の先願特許との関係などを考慮しなくてはならない。こうした目を持ち,対応できる能力が知的財産部員に必要な能力である。 ライセンス業務など新分野を検討 強い知財という観点から,今後は特許の質をいかに見極めるかがポイントになる。当社は現在,約1,000件の特許を保有,年間で100件程度を新規に登録している。維持や出願にかかるコストを縮小して,知財戦略を効率的に進めるためには,定期的な特許の棚卸しとそれを見極める知財部員の判断力が重要である。 将来の戦略目標の1つとして,ライセンス業務も強化していく。2004年現在,当社のライセンス収益は公表していないが,純利益として考えた場合,その事業規模は売上高で数十億円規模の事業に匹敵する。現状は「副産物」に過ぎないが,真水で収入となる収益性を考慮すると,将来性は大きい。 知財部員も技術部門の経験が必要 新分野への対応を含めて,知的財産部員は常に能力向上を目指してほしい。当社は自己の能力開発の一環として,弁理士や知的財産検定などの資格試験や検定の受検を推奨している。ただし,資格や認定は目的ではない。知識の習得や能力向上を図るための手段である。コアとなる能力は現場の技術を理解する力であり,それを重視している。私見として,知財部員は技術部門での業務を経験するべきである。現場を経験し,そこで一定の技術,知識を身に付ける必要がある。今後,知的財産部でプロパーを育成する場合でも,技術部門を10年ほど経験したのちに知財業務に就くことが望ましい。 ただ,人材育成の課題やポイントは時代の趨勢や企業の方向性によって変化する。知的財産部では,そうした要点を知財という面から見極めながら,人材を育成して行かねばならない。(次回へ続く) |
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