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武田薬品工業の知的財産戦略(中)
法規定とIRを重視して情報開示を推進
武田薬品工業常務取締役・知的財産部長の秋元浩氏
[2004/07/21]

 武田薬品工業常務取締役・知的財産部長の秋元浩氏は,このほど開催された「企業経営と知財マネジメントの実際」と題するセミナー(主催:インテクストラ)で,「企業経営と知財情報戦略」について講演した。医薬品に関する法規定に基づいた情報開示と,IR(投資家向け広報)を重視した情報開示を進めることを説明した。
(まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集)


公的な情報開示と非公開データの保護
 医薬品には,一般の工業製品とは異なる情報開示のルールがある。国民に対して,製品の有効性や安全性に関する情報を説明し,的確な理解を得る必要性があるため,医薬品業界では,厚生労働省が省内規定である通達に基づいて,原則,行政文書を開示する。開示するのは,前臨床試験と臨床試験のデータや,特許状況などである。ただし,製造法や製剤,規格など,企業が持つ権利や競争上の地位などを害する情報は,原則,非公開である。
 こうした非公開の申請データに関する保護は,薬事法とその規則によって取り決められている。保護の期間は,「再審査期間」として,だいたい「10年を超えない」程度で定められている。例えば,新規医薬品は8年,小児向け医薬品は8年,オーファン・ドラッグは10年である。オーファン・ドラッグは,医療上の必要性は高いが,薬を必要とする患者数が少ない病気に使う。
 日本の「再審査期間」に相当する同様の制度として,米国では5年間,欧州では8+2+1年が保護期間となっている。この保護期間について,日本政府は「知的財産推進計画」の中で,欧州並みの保護期間に改めることを検討課題にしており,現在,8年間の保護期間に関する要望書が日薬連から厚労省に提出されている。

情報開示の手段
 武田薬品工業における情報開示の手段としては,(ア)ホームページ,(イ)和文と英文によるアニュアル・レポート,(ウ)事業報告書,(エ)決算短信,(オ)有価証券報告書総覧,(カ)データブックがある。従来,これらのツールを使って,知財に関する一般的な情報を公表してきた。例えば,「主要製品の売上高」,「開発製品の進捗状況」について4半期ごとにホームページ上で提供している。
 これらに加えて,2004年7月に初めて年次報告書の中に「知的財産報告」なる章を設けて,総体的に知財に関する情報をまとめて提供する予定である。こうした情報開示は,企業におけるIR(投資家向け広報)活動との関連からも,重視していく必要がある。
 年次報告書で開示している情報は,研究開発中の重点疾患領域に加えて(I)知的財産に関するビジョン,(II)日米欧3極における知的財産体制,(III)知的財産収益と特許保有件数,(IV)発明者に対する実績補償制度,などである。
 一方で,開示の困難な情報がある。例えば,製品の特許保護状況や,和解やライセンスに関する契約などの経済条件である。こうした競争上の不利益につながる情報は,ひいては株主価値の減少につながる恐れがあるため,公開には細心の注意を払わなければならない。(次回へ続く


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