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米Texas Instruments Inc. 日本法務知的財産本部長 鈴木邦三氏「特許の訴訟とライセンス交渉は,人材がカギ」
〜米Texas Instruments社が指摘する

[2004/04/01]

 「特許係争は企業にとってリスクだけではない。学ぶべきことがある」。先ごろ開かれた「国際特許流通セミナー2004」の「企業リスクマネジメント−係争回避の手段としてのライセンシング」セッションにおいて,米Texas Instruments Inc.の日本法務知的財産本部長である鈴木邦三氏は,半導体分野の特許係争として特に有名なキルビー特許の日本での取得,ライセンスおよび訴訟を担当した経験を踏まえ,日本の特許訴訟とライセンス交渉のあり方を論じた。

半導体分野では「完全な特許の独占はありえない」
 鈴木氏によれば,数mm角のSiチップの中に数多くの特許を使用し,複雑で多彩な機能を発揮するエレクトロニクス製品に組み込まれるため,半導体分野においては「完全な特許の独占」はあり得ない。このために特許のライセンスが重要であり,その歴史は50年におよぶと指摘する。
 特許交渉が難航する原因は,双方が数万にも達する特許を世界中で所有し,多種多様な製品を製造・販売して数千億円規模の売上高を持ち,対象製品に使われる技術が高度かつミクロレベルの解析を必要とし,特許対象分野がプロセスからソフトウェアまで多岐にわたり,双方の文化,言語,法律などが異なるためである。このような困難を克服し,一定の期間内に交渉をまとまるライセンス交渉を実施することが重要になる。この際,訴訟はできるだけ避けながら,ロイヤリティを得る,自社で占有したい技術はライセンスの枠から外す,予想外の事態に対する自由度を確保する,といった目的を達成していく。
 特許ライセンス交渉の形式は大きく分けて二つあり,実際には両者の中間的プロセスを模索することが多い。その一つは,双方から同数の特許を提示して,各特許の侵害と有効性を製品別,国別に時間をかけて徹底的に議論する形式である。もう一つは,先行する他社の交渉結果を尊重し,知財部門などのリソースのムダな使用を避け,責任者が結論だけ議論する形式である。

人的要素は特に重要
 いずれの形式においても,交渉によって有利な結果を導くためには,複数の旗艦特許を複数の国で持っておく,自社特許の有効性をあらかじめ確保しておく,相手の侵害事実を明確に立証しておく,相手の特許を適切に評価しておく,各国の特許法と訴訟法を熟知しておく,柔軟に交渉できる人材を育成・確保しておく,といったことが重要になる。
 この中でも人的要素は特に重要であり,正確な技術論のできる人,的確な法律論のできる人,信頼できる情報を収集できる人,社内の関連事業部門に信頼される人,衝突回避のため相手にも信頼される人,真摯で強固な意志を持つ交渉責任者,決断の権限を持つ最終責任者が必要になる(図1)。
図1:重要な人的要素
図1:重要な人的要素

 このため,発明者自身が交渉に関与しなければならなくなったり,このほかにも交渉においてマーケット情報が必要になったりといった多種多様な場面が想定される。
 すなわちライセンス交渉では,知財に関する知識だけではなく,技術,マーケット,関連部署など各種の知識が必要になる。このような要求に答えるには,各部門の担当者が知財関連の知識を身に付けることも検討する必要がある。

(長廣恭明=日経BP知財Awareness副編集長)


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