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海外進出企業は知財に関する人材育成が必要
九州大学大学院法学研究院教授,熊谷健一氏が提言
[2004/05/07]

九州大学大学院法学研究院教授,熊谷健一氏 「中小企業においても,経営戦略全体の中で知財戦略を考えていくことが必要だ。知財専門スタッフの育成も課題の一つである」。4月21日に開催されたシンポジウム「侵害リスク増大する中国知的財産問題」(主催:財団法人知的財産研究所,テクノアソシエーツ)において,九州大学大学院法学研究院教授の熊谷健一氏は,このように指摘した。
 熊谷氏は,九州経済産業局が2003年3月に取りまとめた「九州の海外進出企業等の知的財産権侵害の現状と戦略動向調査研究」の検討委員会の委員長を務めた。検討委員会では,九州地域の企業で,海外進出をしている企業の知財への取り組みについて,ヒアリングなどの調査を実施。調査結果をもとに,アジア諸国との激しい競争の中で知財侵害に苦慮する企業の実態を浮き彫りにするとともに,今後は中小企業においても,経営戦略の一環としての知財戦略に積極的に対応する必要性を強調した。

30社中19社が「模倣品被害あり」
 九州経済産業局における調査研究は,全国の経済産業局が毎年行っている「特許活用調査事業」の一環として2002年度に実施された。九州地域での企業の海外進出状況は,貿易・投資,技術供与,委託生産,人材交流など多方面に及んでいる。ヒアリングやアンケートといった調査を通じて,急増する工業製品の模倣被害や不正な商行為の実態を明らかにし,模倣の実態や知的財産権制度に関する情報不足の解消,リスク回避のためのノウハウの蓄積を目指した。
 ヒアリング調査では,九州地域の海外進出企業から30社を抽出。会社規模としては,従業員数100名未満が10社,資本金1億円未満の企業が17社と,中小企業が中心である。
 調査した30社中,海外にて知財権を「取得している」と回答した企業は19社。模倣品被害について19社が「ある」と答え,「ない」と回答した企業9社においても,7社が「今後被害の可能性がある」と回答し,模倣品による侵害への懸念が高いことが判明した。

模倣品の「発見・製造地域」は中国が第1位
 模倣品の発見・製造地域については,中国を挙げる企業が多く,次いで韓国,タイの順番になった。
 中国での被害実態の特徴としては,製品自体あるいはデザインの模倣が非常に多く,最近は,流出した図面による金型の模倣など,侵害の高度化がみられる。合弁企業からの機密漏洩なども原因と考えられる。侵害発見後の企業の対応は,中国において知的財産権を取得していないことや権利行使の効果に疑問があるため,抗議にとどまる事例が多い。

知財侵害対策の鍵は「費用対効果」
 こうした侵害に対する対応について,ほとんどの企業が「不満足」と回答した。その一方で,侵害対策が新たな管理コストの発生につながるとの懸念も高まっているが,熊谷氏は「企業においては,知財侵害対策の『費用対効果』について,具体的に検討する必要がある」と指摘した。
 今後の対策として熊谷氏は,公的機関による情報提供や相談窓口の設置や,知財侵害に対抗する企業間での情報交換の活性化などを挙げた。
 加えて,海外進出企業は,(1)知財に関する専門的な人材の育成や専門部署の設置,(2)費用対効果の社内指針の策定,(3)情報収集力や侵害被害の起きた国や地域に対する認識の強化,といった取り組みが必要だと提言。今後,企業にとって望ましい知財人材について,(a)知財及び技術に関する充分な知識を有し,質の高い権利を獲得できること,(b)海外への出願のチェックもできること,(c)自社の優位性を理解し,かつ外部機関を有効に活用できること,といった具体的なスキルを示した。
(河井貴之=日経BP知財Awareness編集)


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