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登録商標の活用と幅広い共有によって地域ブランドの価値を向上 財団法人大田区産業振興協会 専務理事の山田伸顯氏に聞く(下)
[2006/03/15]

財団法人大田区産業振興協会専務理事
山田伸顯氏 |  |
財団法人大田区産業振興協会(東京都大田区)は,地域内の団体と連携して「大田ブランド」の発信事業を2006年2月に開始した。ロゴ・マークなど登録商標の利用を通じて,これまで継続してきた地域産業のブランド化の動きを加速している。大田区内の企業に対して情報サービスや交流の機会などを総合的に提供している同協会は,中小企業における知的財産活動の支援も積極的に進めており,日本初の知的財産信託を2004年に導入した(関連記事)。今回の活動は,そうした地域産業の活性化に向けた知財活用の一環として位置付けられる。同協会専務理事・事務局長の山田伸顯氏に,「大田ブランド」の立ち上げに至る経緯とその仕組みを聞いた。
(聞き手は河井貴之=日経BP知財Awareness編集) |
| 問 |
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地域ブランドと商標権の関係では,2006年4月にスタートする「地域団体商標制度」が全国的に注目されている。「大田ブランド」の策定では,どのように対応したのか。
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山 田 氏 |
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ブランド・マーク(ロゴ・マーク)などは,2004年度に経済産業省が推進した「JAPANブランド(J-Brand)育成支援事業」を推進するに当たり,大田のブランドを明確に表示するために考案した。この事業は当時,東京商工会議所が中小企業庁の委託事業として取り組んだものである。大田区と周辺地域の金型製造業者のグループが,自動車産業を中心に成長著しいタイにおいて,需要の高い金型のメインテナンス拠点を設置する計画を進めていた。そのグループと共同して現地の市場調査や事前マーケティングのための展示会出展などを実施した(参考資料)。その際に,「金型」と「大田区の技術力」をJAPANブランドとしてアピールするために大田ブランドのデザインなどを考案し,商標権の取得を目指していた。
ロゴ・マークとキャッチ・フレーズの商標は,通常の商標権として登録している。地域ブランドのシンボルとなるべきロゴ・マークなどの策定,そして商標権の取得は,「大田ブランド」の価値向上に大きく貢献するに違いない。ブランド化の推進活動を具体化できることに加え,権利化したことで今後はブランドの活用や保護が容易になると期待している。さらに,大田ブランドは日本国内だけではなく世界への発信を視野に入れている。 |
| 問 |
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企業などが大田ブランドを取得するためには,どのような条件が必要なのか。 |
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山 田 氏 |
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ブランドの取得要件のあり方については,ブランドの性格とブランド化の意義を決める重要な要素として慎重に議論を重ねた。そして「企業5社の推薦を受けること」を基本的な要件に定めた(表1)。これは,大田ブランドの価値の源泉を「地域の連帯性」に置くことを意味しており,同時に,「ネットワーク」や「集積型」といった大田区の産業構造の特徴を反映している。登録企業は,大田ブランド協議会への登録が認められた時点でブランドの利用が可能になる。 |
表1:大田ブランド登録推薦書の要件
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(1)
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5以上の事業者からの推薦を受けること。その推薦事業者は,原則大田区内の事業者とするが,妥当な理由があれば区外事業者も認める。
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| (2) |
上記の推薦者の内,3事業者は本協議会登録企業とすること。ただし,社団法人大田工業連合会会員団体又は東京商工会議所大田支部の推薦をもって,3事業者の登録企業に代えることができる。
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出所:大田ブランド推進協議会の資料より抜粋。
| 問 |
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東大阪市の「東大阪ブランド」や,川崎市の「川崎ものづくりブランド」など,従来の地域ブランドは最終製品の「品質」を認定要件にする場合が多い。あえて「地域の連帯性」を要件に選んだ背景は何か。 |
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山 田 氏 |
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第1に,大田区には最終製品を製造する企業よりも,製造や加工といった技術など,「技」や「ノウハウ」を強みとする企業が多いことがある。そうした技やノウハウなどの質を担保するためには,企業間の信頼関係や連帯性を基準にすることが適していた。
第2に,われわれがブランド化の最大の意義を大田区の産業の活性化だと考えていることがある。そのためには,大田ブランドへの「入り口」を広くして,より多くの企業の参加を促すことで,ブランドを認知してもらい,またブランド化を通じた地域内の連携を促進していく。ここに,われわれの活動を「大田ブランド発信事業」と位置付けている理由がある。 |
| 問 |
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日本全国における地域ブランドの活性化には,どのような要素が必要になるのか。 |
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山 田 氏 |
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ブランド化は,消費者が「不要・不急」な消費を避けて自己の価値判断を重視する,いわゆる「選別消費」への転換に直面する日本の産業全体の課題の1つであり,それは地域産業も同様である。さらに,こうした傾向は,最終製品市場だけでなく中間製品市場や技術・サービス産業についても,コスト・パフォーマンスを競う時代ではなくなってきた。
ブランド化は,自分たちの製品や技術の質の高さをアピールできるが,相応の責任を負うことになる。ブランド化に取り組む動機,期待するブランド化の機能,そしてブランドが担保する質とその維持について,これらを明確に見定めていくことが肝要だと思う。 |

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